
インナーブランディングとは社内に向けて、自社の理念やビジョンなどを伝えることです。近年、多くの企業がインナーブランディングに注目を集めています。なぜインナーブランディングはこれほどまで企業で重視され始めているのでしょうか。
この記事ではインナーブランディングに注力したい企業の担当者様に向けて、インナーブランディングとはそもそも何なのか、目的や効果的な進め方などを交えて紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
インナーブランディングとは、企業の理念やビジョン、価値観を社内の従業員に浸透させることです。別名「インターナルブランディング」とも呼ばれます。
ブランド力とは本来、以下の3要素の総合力が高まることを意味します。
・ブランドの認知度
・顧客が商品やサービスに感じている品質
・顧客の忠誠度
これらの3要素が高いと、集客や売上、価格競争、採用などの悩みから開放されます。そして、ブランド力に関する悩みのない状態を目指すための施策の一つが「インナーブランディング」です。
従業員が自社の理念やビジョンなどを理解する過程を通して、従業員一人ひとりの意識改革や組織風土の変革を促し、企業価値の向上や理想的な姿の実現を目指します。
適切に実施できると、企業の使命やビジョン、行動基準の価値を従業員に浸透できるため、組織としての生産性が高まります。
インナーブランディングの対義語に「アウターブランディング」があります。インナーブランディングとアウターブランディングの違いは「ブランディングを実施する対象」です。
インナーブランディング | アウターブランディング | |
---|---|---|
施策の対象者 | ・社内の従業員 | ・顧客や消費者 ・求職者 |
施策の内容 | ・自社の理念やビジョン浸透の施策 | ・社外に自社の魅力を伝える施策 |
アウターブランディングは基本的に、顧客に会社を知ってもらうための啓蒙活動を指します。例えば、ロゴや商品・サービス、販促物など目に見える形で伝えたいブランドイメージをアウターブランディングで落とし込みます。
競合他社と自社との違いを明確にし、自社商品やサービスを選んでもらって、直接的な収入アップを図ることが目的です。
しかし、アウターブランディングばかりに注力すると、従業員が疲弊し、離職率アップや組織の生産性低下を招きます。したがって、長期的に安定した企業利益を上げるには、社外への施策だけでなく、従業員に対して行う、インナーブランディングが欠かせません。
インナーブランディングの目的は「企業やブランドが掲げる目標を従業員が主体的に認識し、行動を促すこと」です。施策によって得られる主な効果を以下で説明します。
エンゲージメントとは、従業員が自社に対して抱く愛着心や、業績向上のために自発的に「会社に貢献したい」と思う意欲です。
例えば「自社がどのような理念やビジョンをもって事業を行っているのか」「社会にどのように貢献しているのか」などを従業員が理解できれば、自社に対する魅力を従業員が感じやすくなります。
従業員のエンゲージメントが高いと、仕事に対する積極性や熱意が高まり、従業員一人ひとりが主体的に行動できる点がメリットです。
従業員間で企業理念やビジョンが共有できると、部署を越えた強い連帯感が社内に生まれます。
組織の一体感を強化し、共同性の高い組織の構築ができれば、結果として業務の効率アップが可能です。
従業員同士でお互いに助け合う機会が増えると、仕事の生産性アップにつながるでしょう。
従業員が企業理念やビジョンをしっかり理解できていると、社外に正しくブランドイメージを伝えられます。
企業に対して愛着心や誇りをもった状態になれば、企業が大切にしているコンプライアンスを従業員一人ひとりが順守しやすくなるでしょう。
従業員が熱心かつ丁寧な姿勢で仕事に取り組むようになれば、営業先の関係者や顧客からの好印象や満足度アップにもつながります。
競合他社と差別化を図ることができれば、利益率を向上させるだけでなく、ポジティブな企業イメージの定着が可能です。
適切なインナーブランディングが実施できると、従業員が企業理念やビジョンに共感しやすくなり、仕事に対するやりがいや達成感につながります。結果として離職率が定着し、優秀な人材の流出を防ぐうえでも効果的です。
戦力になる人材が定着すれば、新入社員に対しても質の高い指導ができます。教育体制が強化されると、会社全体の生産性や能力アップなどより良いサイクルを生み出すでしょう。
また、人事や人材採用場面においても、自社にマッチした人材を雇用・配置しやすくなり、ミスマッチを防げます。
インナーブランディングを適切に実行するには、それぞれの施策の特徴を理解することが大切です。ではどうやってインナーブランディングは実行できるのでしょうか。以下では主な事例を紹介します。
社内報とは企業の現状や経営者、従業員のトピックスなど、幅広い情報を社内に向けて発信するインナーブランディングの手法です。
情報共有で使用する媒体ははさまざま。新聞や雑誌のような紙媒体の冊子で全社員に配布されることもあれば、最近では社内報アプリや社内ポータルサイト、動画でのメッセージなど、Web媒体を使用して社内報を発行するケースもあります。
例えば従業員が仕事を毎日するなかで得た気づきやエピソード、インタビュー、意見などをもとに社内報を作成すると、経営者と従業員の相互理解につながるでしょう。企業全体で情報を共有できるだけでなく、現場の最新情報を集めるうえでも効果的です。
社内イベントは従業員同士のつながりを強化できる、インナーブランディングの施策です。
例えば、次のような社内イベントを活用すると、チームや仲間への信頼感が生まれ、関係性が深まります。
・周年イベント
・周年事業
・社員総会
・社内表彰イベント
・研修旅行
企画の際には企業が伝えたいテーマをまず決めること、そして従業員が楽しめる企画にすることがポイントです。イベントを通して従業員同士のつながりが強くなると、エンゲージメントアップや離職率低下につながります。
従業員全員が対面で集まるのが難しい場合は、オンラインで社内イベントを開催することも可能です。オンラインでの実施は社員の移動が必要ないので、負担をおさえてイベントを行えます。
クレドとはラテン語で「信条」「約束」を意味します。クレドは自社のあるべき姿や理念などを小さなカードに簡潔に記し、従業員に配布する、インナーブランディングの一つです。
従業員主体でクレドを作成すると、人材育成やエンゲージメント、コンプライアンスの3つの効果を得て、企業の価値観や利権を従業員全員で共有・浸透できます。意識を共有できると、従業員同士の団結力を高めることが可能です。
従業員一人ひとりにクレドを共有・浸透できれば、自分で考え行動する主体的な人材育成の促進や、従業員のモチベーション向上につながります。
ワークショップとは参加者の主体性を重視した体験型の講座やグループ学習、研究集会などです。企業のインナーブランディングの手法の一つとしてもワークショップは利用されています。
普段、仕事の話はしても企業のあるべき姿について、従業員間で話す機会は多くありません。しかしワークショップを活用して絆を深められれば、モチベーションアップにもつながります。
企業のあるべき姿を自発的に考える機会を設ければ、その後の施策をスムーズに行動に移せます。
トップメッセージとは企業の創業者や社長、会長、役員など、企業のトップに該当する人物が発信するメッセージを指します。
トップメッセージを伝える媒体は多種多様です。
対面の場合は企業幹部が定期的に職場訪問し、現場との意見交換や話し合いの場をつくったり、マネジメント層との話し合いの場を活用したりできます。非対面で実施する場合は社内SNSやWebサイトを使うと、定期的にメッセージを発信できます。
トップメッセージは企業全体に、一体感を生み出すことが可能です。社内に対して、企業のトップにいる経営者やリーダー層が描くビジョンや方向性などを伝えられると、従業員のモチベーションやエンゲージメントが高まります。
効果的なインナーブランディングの手順は以下です。
1.自社の現状把握
2.方向性の言語化
3.計画の立案
4.施策の浸透
5.効果測定
まず自社の現状を正しく把握できていないと、適切な施策を実行できません。インナーブランディングの前には必ず、以下の点を明らかにしましょう。
・自社のブランド価値
・企業理念
・現状の課題
これらの内容を従業員がどのように理解しているか明確にし、お互いに共有すると有益な情報になります。
アンケート調査や個別インタビュー、課題を洗い出すセッション、ワークショップなどを通して、自社の現状を確認しましょう。
インナーブランディングで進む方向性を言語化する際には、誰にでも理解できる簡単な表現で言語化することがポイントです。
特に次の内容はインナーブランディングで欠かせません。
・企業がインナーブランディングで何を実現するか
・具体的にどのような目標達成を目指すか
・どのような未来・ビジョンを描いているか
インナーブランディングの内容が抽象的だったり、難しい言い回しだったりすると、従業員に正確な意味が伝わりません。曖昧な状態で施策を進めると、組織の統率がとりにくくなり、企業が目指すべき形の実現が難しくなります。
組織の状態や企業の状況に合わせて、共通の価値観をわかりやすく具体化できると、組織の基盤にできます。
インナーブランディングの施策が決まっても、見通しが不明確では意味がありません。言語化した内容を踏まえて、自社の課題や目標達成につながる計画を立てましょう。
立案した計画のチェックポイントは次の通りです。
・従業員の気づきを可視化し、お互いに理解しあえる環境を作れているか
・企業理念や想いを従業員が共感できる仕組みになっているか
準備にかかる時間やコストは施策の内容によって異なります。計画段階でできるだけ詳細に内容を詰めることが大切です。必要に応じて、インナーブランディング専用の部署を作ったり、代表者を選定したりすると、従業員に施策の重要性を認識してもらいやすくなります。
インナーブランディングの計画立案まできたら、いよいよ次は施策を実際に実行します。先述した通り、社内報やイベントなど従業員へのアプローチ方法は多種多様です。施策を実践する目的や状況に応じて、適切な手法を選択しましょう。
従業員にインナーブランディングを浸透させるポイントは「押し付けないこと」。法律のような絶対的なルールにしてしまうと、従業員の主体性を促せません。
会社のルールに縛られていると感じてしまうと、逆にエンゲージメントの低下や離職率アップになるので注意してください。企業理念やビジョンなどはあくまでも、判断に困った際に立ち返る行動指針として伝えることが大切です。
インナーブランディングはやって終わりではありません。定期的に効果測定を行って、次の点をチェックしましょう。
・どのくらい施策の効果が出ているか
・本来の目的と現状にズレがないか
・今後どのような点を改善点として活かせるか
効果測定はさまざまな施策で実施が可能です。例えば従業員へのアンケート調査や個人面談などを用いて効果を確認できます。得られたデータは数値化して定期的に振り返ることで、ブランド力アップや問題点の改善を目指せます。
インナーブランディングを適切に行えると、企業理念や会社方針についての理解が深まります。また、社員の満足度やモチベーションアップにもつながるため、結果的に離職率の低下や生産性の向上にも効果的です。
しかし実際に施策に取り組もうと思っても、「自社に合った進め方を知りたい」「本当にこのやり方でいいのか不安」というケースは多いでしょう。そのようなときはインナーブランディングの専門的な知識やノウハウのある企業に相談すると確実です。
タカヨシでは企業のインナーブランディングに関するバックアップや自社に最適な進め方のアドバイスを承っています。インナーブランディングを通した施策をご検討の方はぜひお気軽にご相談ください。経験豊富なスタッフがお答えします。