レルヒさん、それは新潟県の観光キャンペーン「日本スキー発祥100周年」のメインキャラクター。愛知万博のモリゾーとキッコロ、彦根のひこにゃん、そして新潟ではトッキッキ等が活躍する“ゆるキャラ”ブームにうまく便乗したタカヨシの提案が、大手広告代理店など並み居る競合を打ち破ってコンペで採用された、新潟県お墨付きの(?)キャラクターである。

レルヒさんは、1911年に新潟県高田町(現上越市)でスキー指導を行ったオーストリアの軍人「テオドール・フォン・レルヒ少佐」に由来している。“レルヒ少佐”だから“レルヒさん”という非常に安易なネーミングはここから。彼の指導が日本で初の組織的スキー指導であったことから、2011年は日本スキー発祥100周年なのである。丁寧に「さん付け」にして何か悪いことがあろうか。

もともとこのコンペ、「キャラクター」ではなく「ロゴマーク&スローガン」を決めるためのものだった。華やかなりしスキーリゾートも今は昔、バブル後の景気低迷とレジャーの多様化により利用客減少の一途をたどる新潟のスキー場。ふたたびウインタースポーツに光を! じいちゃんと父ちゃんに昔取った杵柄を! そしてかわいい孫には雪遊びをさせよ! という崇高な理念のもと企画された「日本スキー発祥100周年」には、いったいどのようなロゴが相応しいのか……そこで天啓が閃く。「じゃあ、流行りの“ゆるキャラ”でいこうかな。」

だいたいにおいて自治体のロゴマークやらスローガンは、「製作者以外の誰にも思い入れが無い」ものと相場が決まっている。思い入れがないから、誰もそのロゴやらを旗印に頑張ろうとか思わない→予算は使ったけど結果はビミョー→期間も過ぎたし担当者も異動になったから忘れよう、ということになりがちなのである。だったらまずは「自治体の担当者(およびその周辺)」にとって「公務だと忘れるくらい面白い」モノを提供することが大事であり、その答えが「ゆるキャラ→レルヒさん」だったのである。

レルヒさんの造形を担当したのは、外部スタッフであるデザイナーのI氏。タカヨシから出した注文は「“気になる”“怪しい”ヤツに」というもの。単純に「カワイイ」だけではなく「ひっかかる」「記憶にのこる」キャラにしたいということ。ハッキリ言ってキモチワルイあの表情はたぶんそのオーダーから生まれた(たとえば“ド●ガバチョ”みたいな、という打ち合わせがあったかどうかは内緒)。

キャラクター制作のもう一つの狙い、それは「スキーを滑らせる」こと。ポスターなどの印刷物、またwebサイトを通じた情報伝達の有効性は誰もが認めるが、「そこで滑っているレルヒさん」のインパクトには絶対にかなわないのだ。そのため、ゲレンデでのスキー滑走を視野に入れた着ぐるみの制作は、最初から規定路線として進められた。そして完成したのは身長250cmの「うすらでかくて不気味な」着ぐるみ。その姿を見て“子どもが泣いて逃げるのでは”“急斜面で大惨事”等の危惧は、タカヨシのスタッフも県の担当者もとりあえず忘れることにした。

さて、当初の「担当者に面白がられたい」という狙いはまんまと当たった。県担当者の土日をつぶしてのPR活動の結果、イベント、ブログ、加藤清史郎くんや泉田知事との競演等、現実とバーチャル双方でレルヒさんはひっぱりだこ。2月など休みなしであった。この結果露見したのが、キャラクター制作の効果である「メディア話題性」。テレビ、ラジオ、新聞等のマスコミや、同業でライバルでもある広告代理店、そしてもちろん一般の人々がこの“レルヒさん”を、記事やブログという形で話題にし始めたのだ。「思うツボ」である。

このレルヒさんだが、来るべき2011年のスキーシーズンに向けて今後も活躍が期待できる(はず)。なにせ予算の審議で泉田知事も「レルヒさんはどうする」と言ったとか言わないとか(お願いします!)。もちろん各種ツール制作やさまざまな服装のレルヒさんなど、「クリエイティブの発展性」があるのもキャラクターの良いところ。今後も新潟の活性化のためにさまざまな活躍をしてもらい、夏も休みなし! といきたいところである。がんばれ!レルヒさん!



レルヒさん【着ぐるみ】
クリスマスツリーを飾るレルヒさん着ぐるみ
レルヒさん【缶バッチ】
数量限定のレア・アイテム
レルヒさん【のぼり】
大小あります 横断幕もあります

上/レルヒさん【任命書やら名刺やら】
清史郎君も大ヨロコビ(たぶん)ちょっと欲しい

右/レルヒさん【バリエーション】
でも表情はひとつ